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ピキと少年

風のむこうがわ1967 初夏ーある日のスケッチーピキと少年  

 

G

カット5

少年は、残っているヒゴでひのき棒のまわりに、枠をこしらえました。そして、綿をぶあつく敷いて、ピキがもぐりこめるようにしたのです。

肩にとまっていたピキは、やっと何ができたのかわかりました。ピキのベッドです。ピキは、飛び廻ってよろこびました。「これなら、年の明けるのを見ることができる。この少年といっしょなら、雪が降ってどんなに寒くても生きていられる」そう思いました。

H

少年が、宿題をしていると、手にのったり、エンピツの先へとまったり、少年とたわむれて、楽しい日々を過ごしました。もうピキは、ほとんど真夏の頃と同じくらい、元気に室内を飛びまわることができるようになりました。まだ、多少体が重く、羽の先にわずかなしびれがあるものの、寒くてふるえていた時にくらべると、天国にいるようでした。

少年は、ピキといろいろな話しをしました。以前、お母さんから聴いた物語で、それからずっと少年の心の中に住んでいる主人公達、たとえば、幸福な王子や家なき子、それに宝島の少年達、日本やエジプトやギリシャの神々、太陽の神や月の女神、竪琴を弾くオルフェウスや海の泡から生まれたアフロディテ、蜜蜂を飼うアリスタイオス ………。

カット6

そして、インドのお釈迦さま、み仏には、人間も植物も動物も生きているものすべてが、衆生(シュジョウ)として、やさしく見守られている事など、ピキに話してあげたのです。

ピキも少年に、初夏の花壇で、仲のよいクローバーとチューリップが、結婚式をあげた時の楽しかった様子やハヤブサに追われた鳩を若いカシの木がかくまったことなど熱心に説明しました。

ピキはとても元気でした。少年がお使いに行く時も、学習塾へ通う時もストーウ゛を消さずにいてくれるので少しも寒い思いはしませんでした。そんな楽しい毎日でしたから、一週間くらいは、あっという間に過ぎてしまいました。

 

カット7

 

I

今日は12月31日。あと数時間で新しい年がきます。ピキはうれしくて、うれしくて仕方がありませんでした。だから、部屋の中がストーウ゛で熱くなり過ぎているのに気がつかなかったのです。はしゃいで飛びまわったので体中が暖かくなったくらいにしか思っていなかったのです。ところが大変です。ストーウ゛の近くにあったほうきの柄がくすぶり、少しづつジュータンもこがしていたのです。

ピキはこまりました。どうにかして少年に知らせたいのですけれど、夜中です。少年も少年のお父さん、お母さんも寝ています。さらに悪いことには、この離れの勉強部屋の窓はしまっていて、外へ出ることができないのです。

ピキは、あっちこっち懸命に出口をさがし求めました。

カット8

ありました。ありました。やっと見つかったのです。ドアーのカギ穴からようやく戸外に出ました。外に出ることはできましたが、ピキを襲う猛烈な寒さ、まるでその場で凍りつきそうに寒いのです。

ああ、どうしたらよいのでしょう。少年の寝ている建物のオモ屋はどこからも入れないではありませんか。勝手口も玄関もノブでロックするドアー、ピキは、少年に知らせる方法がないことを知りました。

表通りに立つ警報器、残された手段はそれだけです。ピキは飛んで行きました。飛んでいって、体ごと力一杯ぶっつかってみました。しかし、プラスチックの壁はびくともしません。何回も何回も必死にくり返しました。なんとしても破れません。早くしないと大火事になってしまいます。ジュウタンの端は、窓のカーテンに接している筈です。それに寒いので、もう飛ぶことも困難になってきました。ピキは、ふと、他のあたたかそうな家に逃げようかと思いました。  でも、あの日のことが思い出されたのです。そうです。本でつぶされそうになった時のことです。少年とはじめて出逢った時のことです。

 

 

 

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