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ピキと少年

風のむこうがわ1967 初夏ーある日のスケッチーピキと少年  

 

M

カット13

一月一日、元旦の朝。少年が眼を覚ますと、あたり一面真っ白です。明け方近く雪が降りはじめ、つもったのです。

少年は、雪の上を走りまわってみました。やがて、近所の男の子達があつまり、いつの間にか雪合戦が始まりました。

少年は、弱くて負けてばかりいました。投げるたまがひどくおそいのです。みんな面白がって、少年にだけ雪のたまを集中します。

足や腕、身体、顔にまで遠慮なく当たります。それでも少年は頑張っています。

そんな時、少年の眼に雪のため半分白くなっている赤い警報器が映りました。割れたプラスチックのカバーの奥で、ボタンの間にはさまれるようにして死んでいるピキの姿を発見したのです。

カット14

少年は、眼にいっぱい涙をため、飛んでくる雪のたまをさけようともしないで、ピキをじっと見つめました。

すると、どうでしょう。ピキが、眼をひらき、少年にむかって、はっきりと語りかけたのです。

「やさしいキミのために、少しでも役にたってよかった。ボクは警報器の中で新しい年を見ることができた。ボク、とっても幸せだよ。だって、これからは、キミといっしょだもん。キミの心にすみ、いっしょに生きてゆけるもの。ずっとだよ」

少年は、大きくうなずきました。

朝日が雪に反射してまぶしいほどにピキを照らし出しています。さらに、体をおおった小さな氷の粒が光を屈折させるので、まるで、ピキがダイヤモンドや七色の宝石をつけているように輝いているのです。

カット15

そのきれいなことと言ったら!

少年は、「本当だね、いっしょなんだね」強く念をおすように言いました。そして、かがみこんで雪のたまをたくさん作りました。

その一つを手にして、「もう誰にも負けないぞ」。

そう叫ぶと同時に雪のたまを思い切り投げました。

そのたまは、本当に誰にも負けないくらい、強く、速かったのです。

少年は、心の中で、なんども、なんども「ピキ、ありがとう。ピキ、ありがとう」とくり返していました。

もう、少年の涙は頬を流れていませんでした。

 

 

 

 

 

 

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